どっちがいい?センターヴェントとサイドヴェンツ

そもそもヴェントとは?

▲左がセンターヴェント、右がサイドヴェンツ

 

英語では「通風孔」や「はけ口」を意味するヴェントは、ジャケットの場合は着用時の運動性を確保するのを目的に、後身頃の裾(お尻側)に施された切込みを表します。

そしてセンターヴェントは真ん中、サイドヴェンツ(ヴェントの複数形)は両脇にそれぞれ切込みが入ったものを指します。

 

今回はセンターヴェントとサイドヴェンツどちらがおすすめか、またそれぞれの起源やルーツについてご紹介していきます。

 

ちなみに、ヴェント(切込み)が全くない「ノーヴェント」という仕様もあります。イギリス英語では「ヴェントレス」と呼びます。19世紀中盤、それほど大きな運動性能を求めない心身ともに楽な室内着としてスーツの原型が登場した際に、最も簡素な構造であるがゆえに自然と採用されたものです。現在ではタキシードを典型とする礼装用ジャケットは、原則的にこの仕様にするのが習わしです。スーツが世に浸透するにつれ「優雅な身のこなしを求められる」という解釈に変わるにつれ、通常のスーツにはヴェントを施すようになりました。

センターヴェントの起源と意味

センターヴェント(イギリス英語ではシングルヴェント)は、ジャケットの背中の中心を走る縫い目の下部を開けることで作られたものを指します。

 

このセンターヴェントは、乗馬の際に脚部を左右に開きやすくするためにここに切込みが入ったという説が濃厚で、それに従って日本語では「馬乗り」と呼ばれることもあります。

 

軽快で活動的な印象を与え、乗馬を想定したスーツのジャケットには脚部を左右に大きく開けるようにすべく、センターヴェントを深く(長く)入れるのがお約束です。

 

また、それ以外の目的のスーツでも、今日最も目にする機会の多いヴェントです。

特に、アメリカ系のブランドのジャケット、ブレザーなどによく見かけるディテールです。

 

サイドヴェンツの起源と意味

サイドヴェンツ(イギリス英語ではツインヴェンツまたはダブルヴェンツ)は、ジャケットの両脇の縫い目の下部を開けることで作られたものを指します。

 

サイドヴェンツは軍人がサーベルを腰に掲げやすくするよう両脇を開けたのが起源との説があり、日本語では「剣吊り」と呼ばれることがあります。

 

センターヴェントが「軽快」な印象なのに対し、サイドヴェンツはより「重厚」な印象を与え、側面から見た時にトラウザーズのヒップラインと一体化するため、足を長く見せる効果もあります。

 

今日ではイギリス系のブランドやテーラーのディテールに多く取り入れられているため、イギリス系ジャケットの典型と捉えられることが多いです。

 

センターヴェントとサイドヴェンツ、どちらがおすすめ?

結論、スーツを着られる方の好み(軽快さと重厚さどちらを重視したいか)によりますが、特にこだわりがないという方にはぜひサイドヴェンツをお勧めしたいです。

1.サイドヴェンツは側面から見ると足が長く見える

▲左がセンターヴェント、右がサイドヴェンツ(側面から見たとき)

 

「サイドヴェンツの意味」の部分でもご紹介しましたが、側面から見た時にサイドヴェンツの方がトラウザーズのヒップ部分と一体化し、足が長く見えるだけでなく、シルエットも美しくなります。
この点がサイドヴェンツをお勧めする一つ目の理由です。

 

2.サイドヴェンツはトラウザーズのポケットに手を入れてもお尻が見えない

▲左がセンターヴェント、右がサイドヴェンツ(トラウザーズのポケットに手を入れた時)

 

無意識的にトラウザーズのポケットに手を入れることが多い方や、ポケットから何かを取り出すときに、ご覧の通りセンターヴェントではジャケットの後ろ身頃まで引っ張られ、お尻が見えてしまうのに対し、サイドヴェンツは見えません。
スーツをスマートに着こなすという意味では、動作時に洋服のずれや動きが少ないに越したことはありません。
この点がサイドヴェンツをお勧めする二つ目の理由です。

 

ちなみに、シルエットが大きく崩れるためスーツ着用時にトラウザーズのポケットに何かを入れるのはおすすめできません。小物などを収納する場合はジャケットの左右の内ポケット、タバコポケット(ある場合はジャケット内側の裾付近)をお使いになった方が、よりシルエットが崩れにくいです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
これまで何となく着ていたスーツのヴェントについて、よりご理解いただけたのではないでしょうか。
是非、次回スーツやジャケットを購入する際に参考にしてみてください。
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